2014年1月13日月曜日

焼きドーナツに穴はない

ドーナツに、穴があると人は言う。

かつて多くの者がドーナツの穴に思いを馳せてきた。
盗まれたはずの穴を取り返そうとした者、穴の向こうに宇宙や異世界を見た者、輪投げに使った者、有限の面積を持ち境界のない2次元空間の説明に使った者、IPv6のプロモーション動画で使った某社(※1)、必死にドーナツの穴を食べようとした者、逆に穴だけを残してドーナツを食べようとした者……

ドーナツの穴に虚無を認める者は少なくない。真空とかの意味ではなく、その穴に我々がドーナツに関連する物質を見出ださないという意味で、そこには「何もない」。

では本当にドーナツには穴が「ある」のだろうか?

「穴」とは実在する物質・物体を指さないのは明白である。すなわち靴下に穴があるとき、そこに靴下が「ない」が故に穴が「ある」のである。

そもそも我々がドーナツと言うとき、固体や液体として存在している部分、或いは材料に生じた小さな気泡などを指すのであって、ドーナツの穴は、そこにそもそも材料が存在しなかったが故の空間である以上、「ドーナツ」という言葉が指さないものであるはずだ。
ふたを開けた直方体の箱の中の、五面を囲まれた空間が「箱」ではなく「箱の中」であるのと同じように、ドーナツに囲まれた空間は「ドーナツ」ではなく「ドーナツに囲まれた空間」に過ぎないのだ。

すなわち、ドーナツの穴は「ドーナツ」の一部でない。
我々は、ドーナツに囲まれた空間という意味で「ドーナツの穴」という言葉を使っている。そこに誤解が生まれてしまった。

ドーナツに穴はないのである。




まあ詭弁なんだけどね。

どうも。豊作な今期アニメに早くも溺れつつある串カツです。
皆さんは焼きドーナツに穴があると主張できますか?
俺だったらたぶんこんな感じで無難に反駁します。

「穴というのは、ある部分の構造の特徴を指すものであって、『穴がある』という言葉は『穴の空いた構造をしている』という表現の代わりとして使われていると考えるべきだから、穴という物質の部分の存在を主張するものではない」

ありきたりで実につまらんですね。5年くらい前の尖った俺だったら

「そもそもドーナツの物質部分は分子さらには原子として存在しており、これらが遠隔力たる電磁気力で結合しており、原子間・分子間に大きな間隙のあることは周知の事実である。そしてこの間隙中のほとんどの場所は、距離の差はあれども4πsr(ステラジアン)の全方位を囲まれていると考えられる。すなわちドーナツ内部には多くの中空が存在し、これらは上述のことより明らかに穴と呼べるものであるから、いかなる構造のドーナツであっても、原子から構成されある程度の大きさを持ったものであれば必ず穴を持つ。よって焼きドーナツのみならず揚げドーナツも穴を持つといえよう」

とか言ったはずです。
まあ前提も曖昧だし反論の余地がありすぎて今の俺なら即却下しますが。穴の辞書的な定義「反対側まで突き抜けてあいている空所」とかを足掛かりに攻撃できそうですね。

そういえば、位相幾何学は「穴を定義する学問」だ! という話を聞いたことがあるので、トポロジーとか詳しい人はこの心底くだらない(言っちゃった……)主張をスルーするか徹底的に叩き潰すかしてみてはもらえませんか。個人的にはそこら辺の分野にも興味があるので詳しい人がガチで考えた話も聞いてみたいな。

ちなみに、面積が有限で境界のない(つまり端がない)自己交差しない面の有名な例として、球面、ドーナツの表面(トーラスという)、クラインの壺などがあります。
長方形の辺を越えると、反対の辺の線対象な位置に出てくるような空間はトーラスです(言葉で言うのは面倒なんでテキトーにググってください)。


そんじゃ今回は長くなりすぎないうちにこのへんで。
アディダス!(スペイン語で「さようなら」の意)

追記:
※1 - ドーナツじゃなくてベーグルでした。すんません。この動画は稀に見る傑作なので是非観てみてください。 : "Report From The Future"

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